ドリス・ヴァン・ノッテン、香水開発にかける情熱を語る
ドリス・ヴァン・ノッテンは、40年間にわたりファッション界で活躍してきたデザイナーであり、彼の名を冠したブランド「ドリス ヴァン ノッテン」は、多くのファッション愛好者から支持されています。しかし、彼がメンズ・コレクションのデザイナーを退任した現在、彼の情熱は香水の開発に注がれています。これは単なるブランド戦略ではなく、彼にとって新しいクリエイティブな挑戦です。 ヴァン・ノッテンは、「フレグランスはクリエイティビティを発揮する新手法」と呼び、香りが持つ抽象性と無限の可能性に魅了されています。ファッションデザイナーとして、彼は常に色や生地、素材を扱ってきましたが、香水の世界はそれまでの彼のキャリアとは異なる感覚を刺激するものです。 特に、彼が香水の可能性に目覚めたのは2022年のことで、パリで発表したビューティコレクションです。彼はこの時の経験を振り返り、「創り出したものよりももっと可能性があると感じた。ベネツィアの蒸し暑い図書館で古い本の香りに触れ、その場所の美しさや光の入り方、匂いの交わり方に心を打たれた」と語ります。この感覚こそが、彼を新たなフレグランスの世界へと誘ったと言えるでしょう。 ドリスのフレグランスラインは常に驚きと革新に満ちています。敏腕調香師達とのコラボレーションにより、独自の香りが誕生しました。マダガスカル産とタヒチ産のバニラをベースにした“ヴァニーユ カムフラージュ”は、その一例です。これはスイスの香料メーカー、フィルメニッヒのアレクサンドラ・モネの手によるもので、彼が調香師に課した「私を驚かせ、衝撃を与えなさい」という挑戦から誕生しました。また、米IFFのジャン・クリストフ・エローによる“クレイジー バジル”も注目すべき作品であり、“カンナビス パチュリ”に代わる一品としてヴァン・ノッテンの“お気に入り”となっています。 香りの開発は彼にとって今後も重要なクリエイティブなテーマであり続けるでしょう。彼のブランドが贈る新たなフレグランスは、8月19日に店頭と公式ECで発売され、さらに9月1日からは英百貨店セルフリッジでの取り扱いが始まります。 ドリス・ヴァン・ノッテンの新たなフレグランスへの取り組みは、単に商品開発を超えた、彼自身の新しいクリエイティブな表現を追求する旅の一部であり、今後もその動向が注目されることでしょう。これはファッションデザイナーとしての彼の経験と、新たに見出した香りの世界との融合を象徴していると言えます。彼の挑戦は続き、香りという抽象的なメディアを通じて、私たちに新たな感動を届け続けることでしょう。