ラベンダーの香りと健康を支える遺伝子調節因子の発見

ある画期的な研究により、ラベンダーの香り成分と病気への抵抗性を強化する二重の役割を果たす遺伝子が特定されました。この研究では、LaMYC7遺伝子が香り高い化合物であるリナロールとカリオフィレンの生合成をどのように調節し、ラベンダーの香りとその一般的な植物病原体に対する抵抗性を高めるかを明らかにしています。 植物は、生物的ストレス要因である病原体や、極端な温度などの非生物的ストレス要因を含む様々な環境圧力に直面しています。これらの生物的ストレス要因の中で、Pseudomonas syringaeは世界中で植物の健康に重大な脅威を与えています。テルペノイド、特にリナロールとカリオフィレンは、これらのストレス要因に対する植物の防御メカニズムにおいて重要な役割を果たします。しかし、これらの化合物の転写調節は十分に理解されていません。そのため、テルペノイド生合成の基礎にある調節メカニズムに関するより深い研究が必要とされています。 中国科学院植物多様性・専門作物国家重点実験室の研究者たちは、2024年2月6日にHorticulture Researchに研究を発表しました。この研究は、ラベンダーのLaMYC7転写因子が、リナロールとカリオフィレンの生合成を大幅に強化し、Pseudomonas syringaeに対する植物の抵抗力を向上させることを明らかにしています。この発見は、テルペノイド生合成の転写調節について明確にするとともに、病気抵抗性のあるラベンダー品種の開発における潜在的な応用を示唆しています。 研究では、RNAシーケンシング、遺伝子組み換え技術、酵素アッセイを用いて、LaMYC7のラベンダーにおける役割を調査しました。ラベンダーのLaMYC7は、腺毛で高く発現し、UV光、低温、塩、乾燥、メチルジャスモネート、およびPseudomonas syringae感染などのストレスに応答します。タバコの遺伝子にLaMYC7を過剰発現させた結果、リナロールとカリオフィレンの含量が増加し、テルペノイド生合成が強化されました。さらに、LaMYC7がLaTPS76プロモーターに直接結合することで、カリオフィレンの生産性が向上しました。 また、リナロールはPseudomonas syringaeに対する強い抗菌活性を示しました。これらの発見は、LaMYC7が植物防御において重要な役割を果たし、テルペノイドの生合成を調節し、病原体抵抗性を強化することを示唆しています。 この研究の責任著者であるLei Shi博士は、「我々の研究成果は、ラベンダーにおけるテルペノイド生合成の転写調節について貴重な洞察を提供します。LaMYC7を主要な調節因子として特定したことにより、病気抵抗性を高め、エッセンシャルオイルの生産量を向上させたラベンダー品種の育種に新たな可能性が開かれています。この研究は、持続可能な農業実践を開発するために、分子レベルでの植物防御メカニズムを理解することの重要性を強調しています」と述べています。 この研究の影響は広範であり、農業および香料産業への潜在的な応用が期待されています。LaMYC7遺伝子を操作することで、育種家は貴重なエッセンシャルオイルの収量を増加させ、病気抵抗性を向上させたラベンダー品種を開発することができます。これにより持続可能な作物生産に貢献し、ラベンダーの多岐にわたる商業製品への利用への新たな道を開くことができるのです。